地上げのために、借地契約・借家契約の中途解約の話をされたら、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。借地権価格・借家権価格や立退料、営業補償等、その金額の算定には、かなり複雑かつ、さまざまな要素が絡んできますので、これらの問題を多く扱っている弁護士に相談することが、解決への確実な方法であると思います。特に、当事務所には不動産鑑定士もいますので、これらの価格の算定にも適切な対処ができます。
不動産の賃貸借では、契約の更新拒絶や合意解約などで終了させて明け渡しをする場合、しばしば立退料(あるいは明渡し料・移転料・補償金など)の名目で一定の金銭の支払がなされます。
賃貸借契約では「賃借人は賃貸物件の明渡しをする場合、その事由、名目の如何を問わず、立退料、移転料その他の金銭の支払を一切請求しない。」というような条項がよく見られます。それにも拘わらず、なぜこうした支払がなされるのでしょうか。
これは、借地人・借家人の保護を目的とした借地法・借家法の昭和16年改正により、賃貸人の更新拒絶に「正当事由」が要求されることになったことと関係があります。つまり、判例上、その正当事由の判断要素の1つとして、立退料などの財産上の給付の有無も考慮されるようになったのです。
借地法、借家法は、その後平成3年に「借地借家法」に改正統合されました(平成4年8月施行)。そして、その際それまでの判例理論も踏まえ、賃貸人の更新拒絶等の「正当事由」の判断要素の1つとして、従前の経緯や不動産の利用状況等のほか、賃貸人が「財産上の給付」をする旨の申出をした場合にはその申出も考慮して判断することが明記されました(6条、28条)。
したがって、今日では、地主・家主の更新拒絶等に要求される「正当事由」の補完的事情である「財産上の給付」の中に立退料も含まれると考えられます。
不動産の賃借人に明け渡してもらう場合、立退料のような支払がつねに必要という訳ではありません。
例えば、一時使用のための借家契約の場合や借家人に債務不履行がある場合、定期借地・定期借家の場合などは、本来「正当事由」は問題にならないので、立退料も問題になりません。また、賃貸人側の自己使用の必要性が特に大きくそれのみで「正当事由」ありと認められる場合も、補完的事情としての立退料は不要とされる可能性はあります。
もっとも、現実には賃料不払等があって本来不要と見られる場合なのに立退料を支払っているケースなども見られます。しかし、それは立退料支払の必要性があるかどうか裁判等で時間を掛けて争うより、早期決着を優先した結果、支払っているものと考えられます。
立退料は、賃貸人の正当事由が必ずしも十分といえない請求に応じて、賃借人が賃借物件を明け渡す際、賃借人の被る不利益を金銭に見積もって補償するものといえます。
一般的に、立退料には次のような内容が含まれます。