「客観的に合理的な理由」に基づかない解雇は、無効であり、解雇としての効力は生じません(労働契約法16条参照)。
「これ以上給料を支払えないから」という理由は、専ら会社側の経営問題であって、労働者に責任はなく、原則として解雇の理由とはなりません。また、「仕事上のミスをしたから」「勤務態度が怠慢だから」などという理由が挙げられることもありますが、これらの理由だけでは直ちに解雇を正当化する理由にはなりません。
不当に会社を解雇された者は、会社に対して、未払給料の支払い、自分がその会社の従業員であることの確認などを求めることができます。
解雇とは、使用者による一方的な労働契約の解約です。労働者の承諾は要件ではありません。その意味で、労働者と使用者の合意により労働契約を終了させる合意解約とは異なります。
解雇は、その理由(解雇事由)によって、次の3つに大別することができます。
① 懲戒解雇・・・企業秩序違反に対する制裁の側面を持つ解雇です。例えば、経歴詐称、無断欠勤、犯罪行為などをした場合に、就業規則の懲戒事由に該当することを理由に解雇される場合です。
② 整理解雇・・・使用者側の経営上の必要性(経営悪化に伴う余剰人員の削減など)に基づく解雇です。
③ 普通解雇・・・①、②以外で、様々な理由で労働契約を履行し得ない場合になされる解雇です。
① 懲戒解雇 | 企業秩序違反に対する制裁の側面を持つ解雇です。例えば、経歴詐称、無断欠勤、 犯罪行為などをした場合に、就業規則の懲戒事由に該当することを理由に解雇される場合です。 |
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② 整理解雇 | 使用者側の経営上の必要性(経営悪化に伴う余剰人員の削減など)に基づく解雇です。 |
③ 普通解雇 | ①、②以外で、様々な理由で労働契約を履行し得ない場合になされる解雇です。 |
客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められれば、就業規則に普通解雇の条項が規定されていない場合でも、解雇はできると解されます。
また、就業規則に個別に普通解雇の事由が規定してあるが、いわゆる包括条項や一般条項(「その他前各号に準ずる重大な事由がある場合」といった形の規定のことで、解雇事由を包括的に定めておくもの。)の規定がない場合にも、特段の事情がない限り、就業規則の解雇事由は例示列挙と考えられます(従来の裁判例は限定列挙と解するものが多くありましたが、最近の裁判例をみると例示列挙と解するものが増えています。)ので、就業規則に定める解雇事由以外の理由で解雇することができないわけではありません。したがって、就業規則に個別的に定めのない事由であっても、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められれば、解雇はできると考えられます。
懲戒解雇とは、企業秩序違反行為に対する制裁罰である懲戒処分として行われる解雇のことです。
懲戒すべき事由があるからといって、使用者は自由に労働者に対し懲戒処分をすることはできず、「使用者が労働者を懲戒することが出来る場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする。」(労働契約法15条)として、法律で懲戒処分の濫用は禁じられています。
それゆえ、一般的には懲戒解雇処分は次の要件を満たす必要があります。
(1) 懲戒事由等を定める合理的な規程が存在すること
ア 就業規則等に懲戒事由及び懲戒の種類が明定されていること
イ アの定めが労働者に周知されていること
ウ アの規程の内容自体が合理的であること
(2) (1)の規程に該当する懲戒事由が実際に存在すること
(3) 適正手続を経ていること
就業規則や労働協約上、経るべき手続が定められている場合は、この手続を経る必要があります。また、このような規程がない場合でも、本人に弁明の機会を与えることが最低限必要となります。
(4) 解雇規制に反しないこと
解雇の一種であるため、労働契約法16条(解雇権濫用)や個別法令上の解雇制限にも服します。
判例上、典型的な懲戒事由としては、①経歴詐称、②職務懈怠、勤怠不良、③業務命令違反、④業務妨害、⑤職場規律違反、⑥私生活上の犯罪、非行、などがあります。ただ、実際上、軽微な事由による解雇は認められません。
なお、会社が従業員を懲戒解雇したところ、その従業員が解雇の効力を争って訴訟となり、証拠調べの結果、当該従業員の行為が就業規則の懲戒解雇事由に該当するか否か微妙な状況になった場合を考えてみましょう。この場合に、使用者が、「懲戒解雇の意思表示には普通解雇の意思表示も含まれているので、仮に懲戒解雇が無効であっても普通解雇としては有効である」と予備的に主張することがあります。これを懲戒解雇から普通解雇への転換といいます。このような転換は、懲戒解雇と普通解雇では根拠・要件・効果が異なることなどから、近時の裁判例では認められる可能性は低いといえます。
もっとも、このようなケースで一切普通解雇の主張が認められないというのも具体的妥当性を欠きます。そこで、上記のような訴訟の係属中に、懲戒解雇とした事由をもって、普通解雇に該当するものとして普通解雇をした場合、その普通解雇が客観的合理性を欠き、社会通念上相当でないと認められない限り、有効なものとして認められることもあります。懲戒解雇は上記説明のとおり、厳格な要件の下に認められますので、要件を満たすか否かの検討、及び解雇を実施するまでのスケジュールが適正であったかの検討が必要になります。このような作業は、労働法に精通した弁護士に相談した方がよいでしょう。
整理解雇とは、使用者側の経営事情等により生じた従業員数削減の必要性に基づき労働者を解雇することをいいます。このような整理解雇は、判例上次の4つの要件(要素)を満たさなければ解雇権の濫用になると解されています。
※なお、近時判例によれば、上記4要件は判断要素の類型化に過ぎないとし、同要素を総合考慮して解雇権の濫用を判断するようになっているとされています。
人員削減の必要性とは、人員削減措置として解雇することが企業経営上の十分な必要性に基づいていること、又はやむを得ない措置と認められることをいいます。必要性の程度としては、人員削減をしなければ企業が倒産必至または近い将来倒産が予見される状況にあることまでは要求されず、企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づくものであれば足りると解されています。
具体的には、企業全体としてみれば収益が上がっている場合でも、不採算部門を閉鎖して人員削減を行うことも場合によっては合理的な必要性があると認められます。
整理解雇は、業績不振・業務縮小など経営者側の事情に基づく事由によるものであり、労働者に責任のない事由により労働者を失職させることになりますので、できる限り整理解雇は避けるようにすべきといえます。
したがって、整理解雇に際し、希望退職者の募集、労働時間の短縮、一時帰休、配転等なしうる解雇回避努力の検討を行っていないような場合には、裁判例では、解雇回避義務が尽くされたとは認められない傾向にあります。ただ、解雇回避努力義務は、当該具体的事情のもとにおいて、状況に応じて解雇回避の努力をなす義務ですので、企業の経営状況、企業規模、従業員構成などを踏まえて個別具体的に判断されます。
それゆえ、解雇回避努力義務として、整理解雇前に希望退職者の募集を必ず行わなければならないわけではなく、また、希望退職者の募集の範囲も必ずしも全社的に行わなければならないものではありません。
整理解雇は、経営上の必要性から、従業員の中から解雇対象となる者を選別して実施されますが、その選定は、客観的に合理的な選定基準を事前に設定し、公正に適用してなされなければなりません。
具体的な基準としては、(1)人事考課(勤務評定)、(2)年齢、(3)企業への貢献度、(4)労働者の再就職可能性や家計への打撃、(5)非正規労働者か否か、等多数ありますが、これが合理的な基準か否かは、事案の具体的事情に応じて個別的に判断されます。また、経営者は選定基準を解雇前に作成し従業員に示すことが、後に訴訟になった場合に人選の合理性を立証するために重要であると言えるでしょう。
整理解雇にあたっては、経営者は労働者や労働組合に対し、整理解雇の必要性とその内容(時期・規模・方法)及び解雇に対する補償内容などについて納得を得るように十分な説明を行い、誠意をもって協議をすべき信義則上の義務を負います。
一般的には、人員削減の内容が決定した段階で、速やかに説明会などを開き、人員削減をせざるを得なくなった経営状況、これまでのコスト削減策を含む経営改善努力、今後の経営の見通し、人員削減規模の根拠、人員削減の時期、解雇回避努力の内容(配転・出向・希望退職者の募集とその条件など)、人選の選別基準及びこれに関する評価項目の内容等を説明し、労働者又は労働組合から質問のあった事項について、誠意を持って回答することが必要となります。
会社の解散・清算に際してなされる解雇は、一般的には整理解雇の法理は適用されないのが原則です。
もっとも、(1)偽装解散(偽装営業譲渡)の場合――解散会社と実質的に同一性を有する新会社が事業を継続しており、単に労働組合壊滅や組合員排除のための偽装解散に過ぎない場合――などは、①実質的に経営主体が同一である、②法人格否認の法理が適用されるとして、新会社の雇用責任を追及される可能性があります。
また、(2)真正解散の場合ー真に会社が解散した場合ーであっても、企業の存続が容易なのに労働組合壊滅のために会社解散、全員解雇した場合や、雇用存続に向けた努力が認められない場合などは、①解散会社の解雇を無効とする、②清算会社への地位確認・賃金仮払いを認める、③会社代表者個人の会社法429条による責任を追及することなどによって、労働者が救済される余地もあります。
整理解雇の要件の一般論としては説明したとおりですが、各企業よって個別具体的事情が異なります。それゆえ、整理解雇の適正さを判断するにあたっては、労働法実務に精通した弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。
期間を定めた労働契約(有期労働契約)の期間が満了した時点で、契約を更新せずに打ち切ることを「雇止め」といいます。これまで何回も契約を更新してもらっていたため、「来季も引き続き雇用してもらえるだろう。」と安心しきっていたところ、突然、「契約期間が満了しました。はいご苦労さま。」と言われて退職させられるようなことがあります。
しかし、正社員と同様の恒常的業務に就いていた場合や、更新を何回も続けて相当長期間にわたって働いていた場合、あるいは、「ずっと働いてほしい。」と言われていた場合など一定の条件があれば、雇止めは、解雇と同様の厳格な要件をクリアしない限り、許されない可能性があります。このように、有期契約更新拒否に解雇権濫用法理を類推適用し、合理的理由のない更新拒否の効力を否定する法理は、「雇止め法理」と呼ばれています。
「雇止め法理」は、次の通り、3つの類型に分けられます。
この類型にあたる例としては、次のようなものがあります。
契約期間2か月の契約書を取り交わして入社した臨時工が、5~23回にわたり契約更新が行われた後、更新を拒否されたが、臨時工は、従事する仕事の種類、内容の点で本工と差異がなく、また、採用に際して、会社側に長期継続雇用、本工への登用を期待させる言動があり、労働者らも継続雇用を信じて契約書を取り交わし、使用者は期間満了の都度直ちに新契約締結の手続をとっていたわけではなく、従来、臨時工が2か月の期間満了により雇止めされたことはなかったという事例について、解雇に関する法理を類推すべきであるとした判例があります(東芝柳町工場事件判決)。ここでは、下記の①~⑤が判断材料となっています。
より厳格に更新手続が行われていても、雇用関係にある程度の継続が期待され、契約が更新されていた事例について、解雇法理が類推適用されるとした判例があります(日立メディコ事件判決)。ここでは、下記の⑥が判断材料となっています。
初回の契約更新が拒絶された前例のなかったタクシー会社における臨時運転手の初回の契約更新拒絶が争われたが、更新拒絶は信義則に照らし許されないとされた判例があります(龍神タクシー事件判決)。ここでは、下記の⑥が判断材料となっています。
長期にわたり更新が繰り返されてきたケースなどでは、雇止めが有効となるためには、解雇と同様の厳格な要件が必要とされています。過去の裁判例によれば、次のような条件があれば、雇止めの有効性は、解雇と同様に厳しく判断されることになります。
①仕事の内容が正社員と異ならない
②更新の回数が多い
③雇用の通算期間が長い
④更新手続が形式的であったり、ずさんであること(契約書を作らなかったり、事後的に契約書を作ったりするような場合など)
⑤雇用継続の期待をもたせるような言動があったこと(例えば、採用時に使用者が更新を期待させる発言をしたような場合など)
⑥継続雇用を期待することに相当性があること(例えば、他の有期労働者が長年更新を繰り返して雇用されている場合など)
なお、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(H.20.1.23厚生労働省告示第12号)」には、契約を3回以上更新し、または、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者については、少なくとも契約期間の満了する30日前までに雇止めの予告をしなければならない旨、規定されています。
また、労働契約法17条2項は、不必要に短期の有期労働契約の反復とならないよう配慮すべき義務を定めています。この規定の趣旨は、使用者に対し当初から必要な期間を定めるように配慮することを求めることで、契約期間の長期化を促し、雇止めをめぐる紛争の原因である契約更新そのものを減少させることにあります。
解雇は結果的に労働者の就労、生活の糧を失わせることになりますので、きわめて重大な効果を持ちます。それゆえ、厳格な要件をクリアしなければ、解雇の効力は認められません。法律は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効になると明確に定めています(労働契約法16条)。ですので、経営者は、労働者に解雇事由があると考えたとしても、解雇以外の方法(自主退職の勧告など)により、解決できるかを検討するとともに、実際に解雇を行うに際しては、労働者の意見を聴く機会を設けるなど、慎重な手続の下で行う必要があります。
労働基準法19条は、労働者が就職・求職活動が困難な時期に解雇されることを禁止して、労働者を失職による不安から保護するため、労働者が業務上の負傷・疾病による療養のため休業する期間及びその後の30日間と、女性労働者が産前産後の休暇によって休業する期間及びその後の30日間について、使用者の解雇を禁止しています。なお、「その後30日間」とは、療養のため休業する必要がなくなって出勤した日又は出勤しうる状態に回復した日から起算されます。また、この30日間は、休業期間の長短にかかわらないため、仮に負傷による休業期間が1日であっても、その後30日間は解雇が制限されます。
この場合の負傷、疾病は、「業務上」のものでなければならず、業務外の私傷病や通勤災害については、解雇は制限されません。また、「療養」中である必要があるため、治癒(症状固定)後に通院している間は対象外です(治癒後の解雇は制限されない)。なお、「休業」には、全部休業に限らず、一部休業も含まれると解されています。
労働基準法65条は、女子については原則として産前に6週間(出産予定日より6週間前から)、産後に8週間の休暇を認めています。産前の休業は、本人の請求があって初めて発生するので、本人が休業しないで就労している場合は、解雇は制限されません。また、産後の休業は、出産日の翌日から8週間が法定の休業期間なので、これを超えて休業している期間は、たとえ出産に起因する休業であっても、本条にいう休業期間には該当しません。なお、産後6週間を経過した女子が請求した場合は、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは認められているので、その後30日間の起算日は、産後8週間経過した日又は産後8週間以内であって、6週間経過後その請求により就労を開始した日となります。
解雇制限期間中であっても、次の場合は解雇することができます。
①については、労災保険給付との関係が問題となりますが、業務上の傷病による療養の開始後3年を経過した日において、労災保険から傷病補償年金を受けているとき又は同日後受けることとなったときは、打切補償を支払ったものとみなされ、解雇制限はなくなります。
②の場合は、その事由について、労働基準監督署長(労働基準署長)の認定を受ける必要があります。もっとも、この認定は解雇の効力の発生要件ではなく、労働基準署長による事実の確認手続にすぎないので、労働基準署長の認定を受けないでなされた解雇が認定を受けなかったために無効となることはありません。例えば、事業場が火災により焼失した場合(事業主の故意又は重過失に基づく場合を除く)は「天災事変その他やむを得ない事由」に該当しますが、税金の滞納処分を受け事業廃止に至った場合は天災事変その他やむを得ない事由」に該当しないとされています(S63.3.14基発150号)。
顧均等法9条3項が禁止しているのは、労働基準法の規定による産前産後の休業等をしたことを理由とする解雇であり、労働基準法19条の解雇制限期間中になされたかどうかは問わず、産前産後の休業等をしたことを理由とする解雇はすべて均等法違反となります。
上記(3)で述べたのと同様に、育児・介護休業法10条、16条が禁止しているのは、育児・介護休業を取得したことを理由とする解雇であり、労働基準法19条の解雇制限期間中になされたかどうかは問わず、育児・介護休業を取得したことを理由とする解雇はすべて育児・介護休業法違反となります。
使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(解雇予告手当 労働基準法20条1項)。また、1日分の平均賃金を支払った日数だけ、予告日数を短縮することができます(同条2項)。また、予告手当は、解雇の効力が発生する日に支払わなければなりません(即時解雇をする場合は、解雇の意思表示をした日)。予告手当を支払うことなく行われた即時解雇の申し渡しは、予告手当が支払われるまで、又は、30日が経過するまで解雇の効力が生じません。
算定しなければならない事由の発生した日以前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ただし、臨時に支払われた賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ex.夏冬の賞与)は参入しない)を、その期間の総日数で除した金額をいう(労働基準法12条1項本文・4項)。
労働審判は、3回以内の期日で審理が終わりますので、スピーディな解決が期待できます。また、調停が成立しない場合の審判で、労働契約の終了と引換に金銭的な給付を命ずることができるとされています。審判に対する異議が出された場合には、審判の効力が失われ、自動的に本訴(訴訟)に移行することとされています。
一般的には、労働契約上の権利を有する地位を仮に定める「地位保全仮処分」と賃金の仮払いを求める「賃金仮払い仮処分」の双方を同時に申立てます。
申立て後、審尋期日という当事者双方の言い分を聴取するための期日が設けられ、その期日に使用者側、労働者側の双方から主張・証拠(疎明方法)の提出がなされることになります。
疎明方法としては、労働者側からは、解雇通知書、内容証明郵便、就業規則、業務記録、給与明細書、録音テープ(反訳書)等の他、陳述書や聴取書など労働者等の供述を記録したものなどを提出し、使用者側からは、上司、同僚の陳述書、業務日誌などを提出します。裁判所が当事者双方の主張及び証拠を検討し、解雇が無効なものとして、賃金仮払いの決定を出した場合、通常は、解雇後1年間又は仮処分発令後1年間程度というように、期間を限定して発令されます。使用者はその決定にしたがって賃金を仮に支払わなければならなくなります。もっとも、仮処分は本訴の結果が確定するまでの暫定的な決定ですので、本訴において、解雇が有効と判断された場合、使用者は、労働者に対して、仮処分に基づいて仮に支払った賃金の返還を求めることができます。
賃金仮払い仮処分は、賃金の支払がなされない結果、労働者及びその家族らの生活が危機に瀕する状態に至り、又はそのおそれがある場合に、この状態を一時的に救済することを目的とするものです。
労働審判手続は、原則として3回以内の期日において、調停による解決を試みつつ、調停ができない場合には、当事者間の権利関係を踏まえて事案の実情に即した解決をするために必要な審判を行うものです。争点が比較的単純な解雇事件、賃金等請求事件などに適しています。
逆に、争点が複雑である事件、膨大又は緻密な立証が要求される事件、具体的には、整理解雇、差別的取扱い、就業規則の不利益変更等に関する紛争については、労働審判は適さず、訴訟を提起すべきでしょう。訴訟においては、最終的に判決が言い渡され、判決は上訴審によって否定されない限り、くつがえる可能性がないものです。
依頼者の方にとって最も良いと思える方法を選択しますので、専門家である弁護士にぜひご相談ください。